コラム~女性医学の紹介~

「ビタミンDは“ホルモン”だった」

思春期(10〜18歳頃) 性成熟期(18〜45歳頃) 更年期(45〜55歳頃) 老年期(55歳頃〜)

2025.10.06

はじめに

「ビタミンD」と聞くと、なんとなくカルシウムのサポート役という印象があるかもしれません。でも、実はビタミンDは他のビタミンとは全く異なる、“ホルモンのように遺伝子に作用する”特別な存在なのです。

核内受容体に働く「DNAスイッチ栄養素」

通常のビタミンは体の中で補酵素として働きますが、ビタミンDだけは違います。体内で活性型(1,25-ジヒドロキシビタミンD)になると、「ビタミンD受容体(VDR)」という核内受容体に結合します。この受容体は細胞のDNAに直接アクセスし、数百種類の遺伝子発現をコントロールします。

たとえば、

  • 骨を強くするカルシウム結合タンパク

  • 免疫細胞の活性化因子

  • 筋肉の修復を促すたんぱく質

  • 神経伝達や気分に関与するセロトニン関連遺伝子

 

これらの遺伝子は、ビタミンDという「光の信号」によってONになるのです。つまり、ビタミンDは単なる栄養素ではなく、**体の設計図に指令を出す“遺伝子指揮者”**といえます。

他のビタミンとは違う「ホルモン的」な存在

ビタミンDは、厳密にはステロイドホルモンに近い構造を持ち、副腎ホルモン(コルチゾール)や性ホルモン(エストロゲン・テストステロン)と同じく核内受容体ファミリーに属します。このため、ビタミンDは骨・免疫・筋肉・脳・心血管など全身の組織に影響を及ぼすのです。実際、ヒトの遺伝子の3〜5%がビタミンDの制御下にあるといわれています。

適切な摂取で、からだが光る

  • 日光浴:1日15〜30分(腕・顔でOK)

  • 食事:鮭、卵黄、きのこ類

  • サプリメント:不足が続く場合に補助的に

 

血中ビタミンD濃度は「30ng/mL」以上が理想とされます。不足すると、骨や免疫だけでなく、慢性炎症・抑うつ・糖代謝異常にも関与することが分かっています。

まとめ

ビタミンDは、太陽の光を情報として細胞に伝える分子です。核内受容体を通じて遺伝子を調節し、心と体のバランスを整えます。

「ビタミンDを摂る」ということは、単に栄養を補うのではなく── “生命のスイッチ”をそっと押すことなのです

この記事の監修

中村 久基

白山レディースクリニック院長

信州大学医学部卒業。カナダクイーンズ大学Cancer Research Lab、
東京大学産婦人科医局、NTT東日本関東病院、
長野県立こども病院総合周産期母子医療センターなどを経て現職。
日本産婦人科学会専門医・母体保護法指定医、他。
女性の一生を通じた健康サポートに取り組んでいる。

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